市場データから読むギリシャ問題
ギリシャなどの債務問題国の国債市場は、5月初めから再び不安定化している。国債価格からは、「市場が債務元本削減を織り込んだ」ようにみえる。しかし、事態は違う方向に進んでいる。
実際、ギリシャ国債は、急速に利回りが上昇し、格付けは下がり続けている(図2)。これは、5月末時点の欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の審査で、ギリシャの財政再建が目標に届かず、資金支援が途切れる懸念が強まるなか、格付け機関が大幅に格付けを下げたためだ。
この結果、ギリシャ国債の対ドイツ国債利回り格差(ともに10年物)は13%強に達した。その価格は額面ヽ100に対して55程度だ。仮に元本削減が行われた場合、その削減幅が、額面100から55を引いた45、つまり45%に達する、という予想が織り込まれたことを意味する。

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EU拡大の一途だった歴史に終止符
欧州連合(EU)には現在、ヨーロッパの27カ国が、共通通貨ユーロには17カ国が加盟する。経済的に格差がある国が、共通の通貨のもと、共通の金融政策を持ち、一方で財政政策は各国の自由度を残すという、過去に例のない「壮大な実験」はいま、ギリシヤ危機によって、ゆさぶられている。
欧州の統合は、その範囲を広げながら進められてきた。
始まりは、第2次世界大戦直後にさかのぼる。1946年、英首相を務めたウィンストンーチャーチルがチューリヒで、ヨーロッパ合衆国構想を提唱した。続いて、フランスのロベールーシューマン外相が、当時の軍事力の基礎となっていた石炭と鉄鋼を共同管理する「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」の創設を提唱。ECSCは、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダの6力国が加盟し、52年に実現した。
ECSCの成功を受け、57年には、欧州経済共同体(EEC)が創設される。人、モノ、サービスが、国境を越えて自由に移動できる「共通市場」の誕生である。同年には、欧州原子力共同体(EURATOM)も設立された。ECSC、EEC、EURATOMは67年に統合し、欧州共同体(EC)が成立した。
68年、関税同盟により、EC加盟国が相互に輸入する製品の開発を撤廃した。73年にはデンマーク、アイルランド、英国がECに加盟し、計9力国となった。通貨統合については79年、欧州通貨制度(EMS)が発足。一部の国を除く加盟国の通貨を、一定変動幅内に抑える準固定相場制によるシステムによって、通貨安定を狙った。
92年には、オランダ・マーストリヒトで欧州連合条約が調印。加盟国がより幅広く協力する政治・経済統令体EUが誕生した。外交・安全保障政策、司法・内務分野で協力を強化。単一通貨導入にあたっては、単年度の財政赤字がGDP3%以下といった基準も規定された。98年6月には、加盟国の金融政策を担う欧州中央銀行(ECB)を設立。共通通貨ユーロは99年に発足し、02年からは紙幣・硬貨が市中に出回った。
81年ギリシャ、86年ポルトガルとスペイン、95年オーストリア、フィンランド、スウェーデン、04年には東欧10力国、07年ブルガリア、ルー了一アと加盟国を増やしながら、EUは現在にいたっている。拡大の一途をたどってきたユーロだが、今回の混乱を受け、ギリシヤ脱退論やユーロ崩壊論も語られるようになった。EU法や統治機構に詳しい慶応大学の庄司克宏教授は「安全保障も目的とするEUは、経済的に負担となると分かっている国でも受け入れてきた。しかし、今後の加盟申請に対しては、すぐに加盟はさせないが協力は深めるといった、段階的な結合も模索されるのでは」と指摘する